Essay 1 建築から都市へ

ひとつの建築を考える時も周囲の街並や環境、地域の歴史や文化との関係性からデザインを導きだしたい。そして建物ができることによって周囲の環境もより向上していきたい。

 こうした考え方が私の建築に対する基本になっています。 

日本は戦後、経済的には急激に発展してきましたが、その一方、古くからある街並や自然環境は破壊の限りをつくしてしまいました。「開発と発展」という甘い言葉の背後で行政も社会も地域の環境や歴史、とりわけ景観などにほとんど注意をはらわなかった結果が今の現状でしょう。

 もうずいぶん以前になりますが、私はたまたまフランスで建築と都市計画を学ぶ機会を得ました。 そこで、パリの街並や郊外の風景などを身近に感じ、その成立を研究することでいかに彼等が歴史や景観を大切にしているかをまざまざと感じました。

 私は、こうした経験も生かしながら、自分の設計する建築が美しい環境や景観をつくる一端を担えればと考えています。